『敗者のゲーム』要約・書評|勝とうとしない投資を選んだ理由
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「プロが運用する投資信託のほうが、儲かるんじゃないの?」
『敗者のゲーム』の答えは、逆でした。プロでも、市場平均に勝ち続けるのは難しい。だから、勝とうとせず、手数料の安いインデックスファンドで、市場全体を丸ごと持つ。
プロが銘柄を選ぶ投資信託(アクティブファンド)を最初に買った私が、インデックスに移るきっかけになった一冊です。
『敗者のゲーム』ってどんな本?
『敗者のゲーム』は、米国の投資コンサルタントチャールズ・エリスの著書。初版は1985年で、何度も改訂を重ねながら読み継がれてきました。
難しい数式は出てきません。エリスの答えは、最初から明快。
市場に勝とうとせず、市場全体に低コストで投資し続けること。
つまり、インデックス投資が多くの個人投資家にとって有力な選択肢になり得る、という主張です。
いま読めば「そうだろうな」と思う話です。でも、プロに任せる商品を持っていた当時の私には、そう素直には読めませんでした。
タイトルの「敗者のゲーム」って、どういう意味?
この本のタイトル、最初は少し不思議に感じるかもしれません。「敗者のゲーム」とは、いったい何のことなのでしょうか。
テニスにたとえた、有名な話
エリスは、投資をテニスにたとえて説明します。これがとても分かりやすい。
プロのテニスは、「勝者のゲーム」です。鋭いショットや見事なプレーで、自ら点を取りに行く。勝つ人が、勝ちを掴み取る世界です。
一方、アマチュアのテニスは、「敗者のゲーム」だといいます。アマチュア同士の試合では、ミスをした側が失点する。つまり、ミスが少ない人が、結果的に勝つのです。
投資は、もう「敗者のゲーム」になっている
エリスは、こう続けます。かつて投資は、腕利きが勝ちを取りにいく「勝者のゲーム」だった。でも今は、プロの機関投資家が大半を占める世界になり、市場平均を上回り続けるのは、プロでさえ至難の業になった、と。
そんな世界で個人投資家が勝つには、どうすればいいか。答えは、ミスを減らすことでした。
このたとえは、こたえました。私は自分を「アマチュア」だと認めていなかったからです。勉強すれば、いい商品を選べるはず。どこかでそう思っていました。
- 高い手数料を払いすぎない
- 値動きに動揺して、売り買いしすぎない
- 「今が買い時・売り時だ」とタイミングを当てようとしない
これらのミスを徹底的に避けること。そして、市場全体にそのまま乗っかること。それが、敗者のゲームでの「勝ち方」だというわけです。
3つとも、当時の私に心当たりがありました。とくに、1つ目。
私がこの本から学んだ3つのこと
先に、読んだときの状況を書いておきます。
私がこの本を読んだのは、投資を続けながら、迷っていた時期でした。積立はしている。でも、このやり方でいいのか自信がない。そんな状態です。
そしてもうひとつ、書いておくべきことが。冒頭に書いたアクティブファンドを、このとき私はまだ持っていました。
「専門家が運用してくれるなら、そのほうがいいだろう」。そう考えて買い、そのまま持ち続けていたのです。インデックスファンドの存在を知り、そちらへ完全に移していったのは、そこからのことでした。この本を読んだのは、まだその考えを引きずっていた時期です。
1市場に勝ち続けるのは、プロでも難しい
一番こたえたのは、これ。手数料控除後に、長期で市場平均を上回り続けるアクティブファンドは多くないという指摘です。
自分が持っていた商品のことを、そのまま言われている気がしました。
「プロに任せれば安心」。私はそう思って選んでいたのに、その前提そのものが崩れたわけです。高い手数料を払ってプロに任せても市場平均に勝てないのなら、最初から市場平均を買えばいい。
言われてみれば、当たり前のこと。ただ、自分がお金を出した後で言われると、話は別です。しばらく受け止めきれませんでした。
2コストとタイミングが、最大の敵
リターンは、誰にもコントロールできません。でも、コスト(手数料)は、確実に発生するマイナスです。そして、売買のタイミングを当てようとする行為は、たいてい裏目に出る。
この本を読んで、「低コストの商品を選び、売買を最小限にする」ことの大切さを、腹の底から理解した。わが家が、信託報酬(持っているあいだ、毎年かかる手数料)の低いインデックスファンドを選ぶ理由は、ここにあります。ほったらかしているのも、同じ理由です。
3「何もしない」勇気こそ、最大の武器
投資をしていると、つい「何かしなきゃ」と思ってしまいます。下がれば売りたくなるし、上がれば追加で買いたくなる。
でもエリスは、「何もせず、ただ持ち続けること」の価値を繰り返し説きます。市場の短期的な上下に反応せず、淡々と保有し続ける。この「何もしない勇気」こそが、長期投資家にとって最大の武器なのだと、教えてくれました。
「何もしない」のは、思っていたよりずっと難しいことでした。画面を開けば、何か手を打ちたくなる。
そこで、私が実際に変えたことがひとつだけ。相場を見る回数を減らしました。
売買のルールを変えたわけではありません。持っているものも変えていません。ただ、見る回数を減らした。それだけです。
見なければ、何かしたくもならない。意志で我慢するより、そもそも判断する場面を減らすほうが、自分には合っていました。
40代の私に、特に響いた理由
この本が、40代の私に特に響いたのには、理由があります。
ひとつは、時間を味方にできること。40代といっても、定年やその先まで考えれば、まだ20年以上の投資期間があります。長く市場に居続けるほど、この本の戦略は生きてきます。「40代からじゃ遅い」ということは、ありません。
ただし、教育費など近いうちに使うお金は、投資とは分けておく。これが前提です。
もうひとつは、忙しい世代だからこそ合っていること。仕事に家庭にと、市場とにらめっこしている時間は、ほとんどありません。「勝とうとしない・何もしない」という戦略は、時間のない40代の会社員にこそ、ぴったりなのです。
わが家が続けてきたのは、「全世界株インデックスを、低コストで、ほったらかす」というやり方。この本は、そこにしっかりとした裏付けをくれました。
この本が、いちばん刺さる人
私がこの本にいちばん刺されたのは、アクティブファンドを持ったまま読んだから。だから、こう言えます。
いま、プロに任せる商品を持っている人。 ここがいちばん響きます。手数料を払っている側で読むと、他人ごとになりません。私は自分の持っている商品のことを言われている気がして、しばらく受け止めきれませんでした。
画面を開く回数が多い人。 この本を読んで私が変えたのは、売買のルールではなく、見る回数のほうでした。意志で我慢するより、判断する場面をそもそも減らす。その考え方に切り替わります。
逆に、もう「勝とうとしない」で腹が決まっている人には、新しいことはあまり書かれていないかもしれません。この本の価値は、迷っている最中に読むことにあるのだと思います。
まとめ:勝とうとしないことが、結局いちばん勝つ
市場に勝とうとせず、低コストで市場全体に投資し続ける。 『敗者のゲーム』が教えてくれたのは、この逆説的な答えでした。
派手さはありません。でも、この考え方を土台に持てたから、私は値動きに一喜一憂せず、淡々と投資を続けてこられた。投資の考え方を整理したい方に、選択肢の一つとして手に取ってほしい一冊です。
「勝とうとしなくていい」と知ったとき、少し拍子抜けして、同時にほっとしたのを覚えています。どこかでずっと、誰かに勝たなければいけない気がしていたのかもしれません。肩の力が抜けてから、続けることそのものに、迷いが減りました。
もし「投資で勝ちにいくのに、少し疲れてきたな」と感じているなら、『敗者のゲーム』を一度手に取ってみてください。“勝とうとしない”という考え方に触れるだけで、肩の力がふっと抜けるかもしれません。
明日もまた、歩きながら考えます。
はいと
40代・4人家族の会社員。
お金の知識がなかった、あの頃の自分に向けて書いています。
※本記事は書籍の内容を、筆者なりの解釈でまとめたものです。投資は元本割れのリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。
情報の出どころ
- チャールズ・エリス著、鹿毛雄二・鹿毛房子訳『敗者のゲーム[原著第8版]』日本経済新聞出版、2022年(版によって内容・ページ数は異なります)
- S&P Dow Jones Indices|SPIVA Japan Scorecard
SPIVAは、アクティブ運用と指数の実績を比較する資料です。対象期間や分類によって結果は異なり、将来の運用成果を保証するものではありません。

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