【家計見直し実践編】生命保険(前編)── 考え方

家族四人分のコートが玄関に並ぶ、日々の暮らしと備えのイメージイラスト
「保険を減らして、もしものときに困らないだろうか」

その不安は、数字に分解すると小さくなりました。

国の制度(公的補償)でどこまで出るかを確かめる。必要な保障額を、生活費から逆算する。そのうえで、保障額・期間・保険料を選ぶ。この順番で考えて、月約44,000円の保険料は、月約6,500円になりました。

当時のわが家:月約44,000円の保険料

数年前、改めてわが家の保険を確認すると、こんな状況でした。

終身保険:月 約38,000円
収入保障保険:月 約6,000円
合計:月 約44,000円(年間 約528,000円)

これは、結婚や子どもの誕生といったライフイベントのタイミングで加入し、その後はほぼ放置していた状態。

そして恐ろしいのは、自分でもどんな保障内容なのか、すぐには答えられないこと。

保険証券を引っ張り出して、ようやく「ああ、こういう内容だったか」と思い出すレベル。

「何かあったとき、本当にこの保険で守られるんだろうか?」

そんな素朴な不安が、見直しの出発点でした。


なぜ動けなかったのか

保険の見直しは、スマホ料金やインターネット代以上に動きづらい固定費でした。

理由を振り返ると、3つあります。

01「もしも」を考えると、減らせない

保険は、万が一のときの安心を買っている商品。

「減らした直後に何か起きたら、家族が困る」── そう考えると、削るどころか、増やしたくなる気持ちすら湧いてきます。

不安が判断を曇らせる、典型的な領域。

02加入時は「納得して」契約していた。でも、納得の中身が間違っていた

保険に入ったのは、結婚や子どもの誕生のタイミング。

担当者の説明を聞き、保障内容も理解した上で、納得して契約していました。「何のために、いくら備える保険なのか」も、自分なりに把握していたつもり。

ところが、しばらく経って気づいたのです。その保険が、わが家の状況に合っていなかったことに。

なかでも、終身保険(一生涯、死亡保障が続く保険)の 月約38,000円。わが家に必要な保障と比べると、保険料が重すぎました。

「これだけの保険料を、本当に20年・30年と払い続けるのか?」

そう気づいたからには、見直さないわけにはいかなくなりました。

03外貨建変額保険の罠 ──「保険と投資、ひとつでまかなえる」と思っていた

加入していた保険のひとつが、外貨建変額保険でした。

「保険の機能と、投資の機能、どちらもこれひとつで」── そんな魅力的な響きに、すっかり納得していました。「保険にも入れて、運用もできて、お得じゃないか」と。

ところが、本気で中身を見直したとき、気づくのに少し時間がかかった真実がありました。

中身は、わが家には保障内容が見えにくく、運用コストも納得できなかった商品。

死亡保障の額面に対して保険料が割高で、運用部分の手数料も高い投資信託の組み合わせ。「保険でも、投資でも、中途半端」というのが、率直な感想でした。

ここから、私のなかで結論が固まりました。

保険は、保険の機能だけで活用する。
投資は、投資の手段でしっかり運用する。

両者を一つの商品にまとめると、見えなくなることが多すぎる。これは、見直しの過程で得た、大きな教訓でした。


視点を変える:保険は「自分で備えられない損失」への備え

雨から守られた軒下と、その先の明るい庭を描いたイメージイラスト
備えは、必要なところに、必要な分だけ。[イメージイラスト]

転機は、保険の役割をシンプルに定義し直したときでした。

保険とは、「自分で備えられない、大きな損失」に対する備え。

逆に言えば、貯蓄や公的保障で足りる部分にまで、保険を重ねる必要はない。

これは、健康に対する考え方とよく似ています。

  • 健康にまったく気を遣わないのはまずい
  • でも、過剰なサプリで体を埋め尽くす必要もない
  • 必要な部分に、適切な量だけ

保険も同じ。「ゼロでもない、過剰でもない、ちょうどいい量」を探すのが、見直しの本質でした。


公的補償で、意外とカバーされている

保険を減らせるかを判断するために、私が最初にやったのは公的補償を調べることでした。

順番として、これが先だと思ったからです。すでに国から出るものを知らないまま、民間保険で上乗せしても、いくら必要かは決まりません。

調べてみて、驚きました。思っていたより、手厚かったのです。

遺族年金

会社員(厚生年金加入者)が亡くなった場合、残された家族には遺族基礎年金+遺族厚生年金が支給されます。

支給額は、収入・加入期間・家族構成によって変わります。参考までに、配偶者と子どもがいる会社員世帯を想定した概算例は次のとおりです。

生計者の平均年収 遺族年金の月額目安
300万円 約 12〜13万円
500万円 約 13〜15万円
700万円 約 15〜17万円
900万円 約 17〜18万円

※ あくまで概算。実際の支給額は、加入期間・子どもの年齢・配偶者の年齢など、個別の条件で変動します。

私が保険を厚くしていたのは、まさに「万が一のとき、家族の生活費はどうなるのか」という不安からでした。

でも、この数字を見て考えが変わりました。ゼロから全部を民間保険で用意する必要はない。 足りない分だけを埋めればいい。

不安の大きさで決めていたものを、数字で決められるようになった瞬間でした。

健康保険(高額療養費制度)

入院や手術で医療費が高額になっても、高額療養費制度により、自己負担額には上限があります。

所得区分によって上限は変わります。2026年8月に改定されたあとの金額は、次のとおりです。

標準報酬月額 医療費100万円のときの自己負担
83万円以上 約 27.1万円
53万〜79万円 約 18.3万円
28万〜50万円 約 9.3万円
26万円以下 6.15万円
住民税非課税 3.69万円

※ 70歳未満のケース。2026年8月の改定で月額の上限が引き上げられ、あわせて年間の上限額(所得区分により29万〜168万円)が新しく設けられました。

高額な医療費には公的医療保険の仕組みがあります。ただし、別に考える必要があるものもあります。差額ベッド代、先進医療(公的医療保険がきかない、高度な治療)の費用、入院中の収入減などです。だから、「自己負担がいくらになるか」は、家計ごとに確認しました。

そして、調べていていちばん驚いたのが、次の仕組みでした。

健康保険組合の「付加給付」── 上乗せのある会社も多い

大企業や業界団体の健康保険組合に加入している場合、「付加給付」という上乗せ給付があるケースが多くあります。

これは、健保組合が独自に高額療養費制度に上乗せして給付してくれる仕組み。

月の自己負担上限が、実質 月25,000円程度になるケースもある。

通常の高額療養費の上限(上の表)と比べると、その差は歴然。

私はこの制度を、保険を見直すまで知りませんでした。調べてみると、わが家が加入している健保組合にも、付加給付がありました。 何年も保険料を払っていたのに、自分が受けられる給付を把握していなかったわけです。

勤務先に付加給付があるかは、健保組合のサイトや人事部門で確認できます。民間の保険を検討する前に、ここを見るほうが先でした。

障害年金

病気やケガで働けなくなった場合も、障害年金という公的制度があります。

これも、私は見直すまで意識していませんでした。

こうして並べてみると、自分がいかに「知らないまま不安がっていたか」が分かりました。保険を減らせなかったのは、商品が悪かったからではありません。足元にあるものを見ていなかったからでした。


必要保障額の試算:「不安」を「数字」に分解する

公的補償を確認したうえで、自分たちで備える必要のある金額を試算しました。

ロジックはシンプルです。

家族の必要な生活費 ー 公的補償 ー 自分の貯蓄 = 保険で備えるべき金額

わが家の場合、私に万一のことがあったあと、家族が暮らしていくのに必要な月の生活費を 40万円 と見積もりました。いまの世帯の生活費より少ないのは、私の分が抜けるからです。

この生活費に対して、

  • 公的補償(遺族年金など)でカバーされる分
  • 自分の貯蓄でカバーできる分
  • 配偶者の働き方や子どもの成長で変動する分

これらを整理した上で、残りを保険で備える。

加えて、子どもが社会に出るまでの教育費だけで約1,000万円を、別途準備が必要、と見積もりました。

「漠然とした不安」が、こうして「具体的な数字」に変わった瞬間、見直しのハードルがぐっと下がりました。

必要な備えが見えれば、保険は 「あといくら買うか」 の話に変わる。

このシンプルな結論にたどり着けたことが、見直しを進める原動力になりました。


保険の3要素:保障額・保障期間・保険料

必要保障額(万一のとき、家族に必要なお金の総額)が見えてきたら、次はどんな保険を選ぶか。

ここで意識したのが、「保険の3要素」でした。

01保障額

「いくら受け取れるか」。

必要保障額の試算をもとに、過不足なく設定する。

多すぎる保険は、ただの払いすぎ。少なすぎる保険は、いざというときに役立たない。

02保障期間

「いつまで保障が必要か」。

子どもが小さいうちは保障を厚く、独立すれば必要保障額は減る。ライフステージに合わせて期間を区切るのが基本。

「一生涯」と思って入っている終身保険も、本当に一生涯必要か、改めて問い直す価値があります。

03保険料

「いくら払うか」。

毎月の負担額が家計を圧迫していないか。10年・20年と続く支払いを、長期視点で見る。

この3つを、自分の家族の事情にあわせて組み合わせる。

それが、保険選びの基本でした。


まとめ:保険は「正しく備える」ところから始まる

保険の見直しは、「不安」を「数字」に分解する作業から始まります。

  • 公的補償で、どこまでカバーされるかを確認する
  • 必要保障額を、家族構成と生活費から逆算する
  • 保険の3要素(保障額・保障期間・保険料)で、過不足なく選ぶ

この前編では、見直す前に整理した考え方をお伝えしました。

見直しを終えたいまも、家族を守りたい気持ちは、加入したころと何も変わっていません。変わったのは、その気持ちの向け先だけです。やみくもに保険料を積むことから、必要な分を見極めて備えることへ。それは不安から目をそらすことではなく、不安とちゃんと向き合うことでした。

後編では、この考え方で実際に保険を選び直し、月約44,000円が月約6,500円になった経緯を書いています。

「保険、なんとなく入ってるけど、本当に必要?」と感じている方の、何かのヒントになれば嬉しいです。

🌱 最後に、ひとつだけ

保険を見直す前に、ご自身の勤務先の健康保険に「付加給付」があるか、一度確認してみてください。健保組合のサイトや人事で、すぐに分かります。もし上乗せがあれば、医療費の自己負担はぐっと軽くなり、「どこまで保険で備えるべきか」の見え方が変わります。まず“すでにある備え”を知る。それだけでも、不安との距離は少し縮まります。

明日もまた、歩きながら考えます。


はいと はいと
40代・4人家族の会社員。
お金の知識がなかった、あの頃の自分に向けて書いています。


情報の出どころ

制度や給付額は家族構成、所得、加入している健康保険などで異なります。この記事の金額は、見直し当時のわが家の試算例です。


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