暴落で売りたくなったら? 私が売らずにいられた理由は「先に決めておく」
「今のうちに、売ってしまったほうがいいんじゃないか」
売らずにいられたのは、売らずにいられる準備を、先に重ねていたからです。
コロナのときは、私も売りたいと思いました。それでも踏みとどまれたのは、積立額が暮らしを揺るがさない額で、買い付けも自動にしていたから。だから、売らないと決めるのは、相場が穏やかないまのうちです。
私が経験してきた暴落
旧つみたてNISAで積立を始めて間もない頃、いきなり大きな試練が来ました。コロナショックです。
これが、私にとって初めての暴落でした。世界中の株価が一斉に崩れ、画面の数字がどんどん赤くなっていく。あの感覚は、今でも忘れられません。
どれくらいの下げだったのか、あとから調べています。私のコアが連動する指数は、MSCI ACWI(USD・ネットリターン)。2020年2月12日から3月23日までに、最大33.74%下落しています。自分の口座の下落率は記録が残っていませんが、世界全体がこれだけ動いた時期でした。
その後も、相場は何度も大きく揺れました。
- アメリカの景気後退(リセッション)懸念
- 日銀の利上げ
- 円高の進行
こうした要因が重なって、私は何度も下落局面を経験してきた。保有資産の評価額が、短い期間で大きく下がることもありました。
約7年のあいだに、これだけの下落をくぐってきた。そう書くと我ながら、よく続けてこられたなと思います。
コロナのときは、「売りたい」と思った
初めての暴落だったコロナショックのとき、私は「売りたい」と思いました。
それまで順調に増えていた資産が、日に日に減っていく。「投資って、こんなに怖いものなのか」と、身をもって知った瞬間でした。
そのころの私は、どれだけ下がるのかが気になって、一日に何度も評価額をチェックしていました。見るたびにマイナスが膨らんでいて、そのたびに胃が痛くなる。「今のうちに売ったほうがいいのでは」── そんな声が、頭の中で何度も鳴っていました。
このまま淡々と続けていて、本当にいいのだろうか。あのときの私は、心のどこかでずっと不安を抱えていた気がします。
コロナのとき、私を踏みとどまらせたもの
では、なぜ私は、あの衝動に負けずにすんだのか。
いま振り返ると、当時の私に立派な理屈があったわけではない。むしろ支えてくれたのは、そのときの状況と、たまたま作っていた仕組みでした。
1積立額が小さく、暮らしを揺るがさなかった
いちばん大きかったのは、たぶんこれ。当時の私は、旧つみたてNISAで月33,333円を積み立てていただけでした。
もちろん、減っていく数字を見るのはつらい。それでも、その月の生活費が脅かされるような金額ではありませんでした。売らなくても、暮らしは回る。 いま思えば、少額から始めていたことが、最初の暴落を越える助けになっていました。
もし生活費を削ってまで大きな金額を投じていたら、きっと私も売っていたと思います。
2自動積立にしていて、手を動かさずに済んだ
もうひとつは、買い付けを自動積立で仕組み化していたことです。
毎月決まった日に、決まった額が自動で買われていく。私が「今月は買おうか、やめようか」と、いちいち決断する必要がない。
決断する場面が少なければ、迷う場面も減る。仕組みに任せていたことが、感情から自分を遠ざけてくれました。
3結局、「何もしなかった」
そして、これが本当のところかもしれない。私は、売るための操作をしませんでした。
「売りたい」と思いながら、証券口座を開いて、売却ボタンを押すところまではいかなかった。決断できなかった、と言ったほうが正確かもしれません。
でも、投資においては、動かないことが最善の選択になる場面がある。あのときの私は、迷いながらも、結果的にそれを選んでいたのだと思います。
その後の暴落で、支えになったもの
コロナショックのあと、相場は何度も揺れています。そのたびに落ち着いていられるようになったのは、あの怖さを味わったあとに、少しずつ準備を重ねてきたからです。
4本を読んで、考え方を整えた
「相場が動くたびに動揺する自分を、なんとかしたい」── そう思って手に取ったのが、本でした。
『敗者のゲーム』や『投資の大原則』をはじめ、長期投資の本を読むうちに、共通して書かれていることに気づきます。それは、相場が良いときも悪いときも、自分で決めた方針を淡々と続けることが大切、ということ。
暴落は、長く投資を続けていれば出くわすことがあるもの。それは「想定外の異常事態」ではなく「起こりうる出来事」なのだと、本が教えてくれました。
知識は、感情のブレーキになる。この学びがあったから、次の下落では、最初のときほど動揺せずにいられました。
5家計を整え、生活防衛資金を確保した
次に支えになったのが、お金の面での余裕です。
「貯める力」で固定費を見直して家計に余白を作り、投資に回すお金とは別に、生活防衛資金を現金で確保しました。収入が止まっても、しばらく暮らせるお金です。
積立額はその後だんだん増えていきましたが、土台を先に固めていたから、金額が大きくなっても怖さはむしろ減っていった。順番が逆だったら、続けられなかったと思います。
6コアを、全世界株に定めた
何を買うかがはっきりしたことも、大きな支えになりました。
資産の中心に置いたのは、全世界の株式に丸ごと分散したインデックスファンド、いわゆる「オルカン」です。
一つの国や一つの会社に賭けているわけではない。世界中の企業に、薄く広く分散している。だから短期の値動きに振り回されるより、長期的な回復と成長に期待しながら持ち続けたい── そう考えられるようになりました。
7「自分の航路を守る」と、先に決めた
そして最後に、「暴落が来ても、売らずに積み立てを続ける」と、あらかじめ決めておいたことです。
先に決めておけば、いざ暴落が来たときに、改めて判断を迫られなくて済みます。その場で「どうしよう」と考え始めると、恐怖に飲み込まれやすくなる。でも、ルールが決まっていれば、「決めたとおりにするだけ」になる。
考える余地を減らしておくことが、いちばん大きな防御でした。
今は、暴落とどう向き合っているか
こうした経験を重ねて、いまの私は、暴落とずいぶん落ち着いて付き合えるようになりました。
もちろん、資産が減るのは、いまでも残念です。そこは強がっても仕方がありません。
でも、そんなときは自分にこう言い聞かせています。「今はまだ資産形成のフェーズ。安く買える時期でもある」と。
積み立てを続けている最中なら、株価が下がる局面は、同じ金額でより多く買える時期でもある。そう思えるようになってから、ずいぶん気持ちが軽くなりました。
評価額のチェックも、コロナのころのように一日に何度も見ることはなくなりました。いまは週に1回か、月に1回。資産が増えると、月給くらいの金額が普通に動くようになります。いちいち見ていられなくなった、というのが本当のところです。
振り返って思うこと
こうして振り返ってみると、少なくとも私の場合は、あのとき売らずに持ち続けてよかったと思います。
何度も訪れた下落相場のあと、相場が回復する局面も経験しています。その後は円安と株価の上昇もあって、金融資産は結果的に増えてきました。
もしあのコロナショックで狼狽売りをしていたら、その後の回復局面を待てなかったかもしれません。
そして、いまの私は、下落相場を少し違う目で見られるようになりました。私が目指すSIDE FIREは、まだ何年も先の話。それまでは、積立を続けていくフェーズです。だとすれば、下落相場は「怖いだけの時間」ではなく、将来に向けて淡々と買い続ける時間でもあるのだと思っています。
同じ出来事でも、立っている場所が変われば、見え方はまるで違ってくる。それを教えてくれたのが、何度もの暴落でした。
まとめ:「売らない」と、先に決めておく
暴落は、売るかどうかを決める場面ではなく、先に決めておいた航路を、ただ守る場面。 売らずにいられた理由を突き詰めると、この一言にたどり着きます。
恐怖のさなかに落ち着いて判断するのは、誰にとっても難しいことです。だからこそ、相場が穏やかなうちに方針を決めておく。そして、本で学び、仕組みで支え、お金の余裕でクッションを作っておく。
私が何度もの暴落を越えてこられたのは、特別な才能があったからではありません。ただ、売らずにいられる準備を、少しずつ重ねていたから。それだけだと思います。
相場が穏やかないまのうちに、「暴落が来ても売らない」と紙に一行だけ書いておくのがおすすめです。あわせて、生活防衛資金がいくらあるかも確認しておく。恐怖のさなかに判断しなくて済むように、決めるのは"いま"のほうがずっと楽です。わが家も、その一行に何度も助けられました。
明日もまた、歩きながら考えます。
はいと
40代・4人家族の会社員。
お金の知識がなかった、あの頃の自分に向けて書いています。
※本記事は筆者自身の経験と考えをまとめたものです。投資は元本割れのリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。
情報の出どころ
- バートン・マルキール、チャールズ・エリス『投資の大原則』日本経済新聞出版
- チャールズ・エリス『敗者のゲーム』日本経済新聞出版
- 金融庁|NISA特設ウェブサイト
- MSCI|ACWI インデックス ── 2020年2月12日〜3月23日の最大下落率について(USD・ネットリターン)

はいと

